君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
なんでも、『花に水やりとか殆どやったことないし加減が分からないから苦手』らしい。
伊織君にも不器用なところがあるんだ。
「春子ちゃん、今日も元気だ」
「元気か元気じゃないかの違い、分かるの?」
「分かる」
嘘、絶対適当だよね。のらりくらりとしていて掴めない部分があるのが伊織君だ。
笑顔でいても、心の奥で何を思っているのか予測できない。
そういう手が届きそうで届かないところも、伊織君を魅力的にみせる要因の1つなんだろうけど。
「はーるー子ちゃん」
窓際にするり、猫みたいにしなやかな動きで春子ちゃんに寄り添い、目を細める。
伊織君は特別花が好きってわけじゃないけど、春子ちゃんには特別愛着を感じているようで。
伊織君が分かりやすく興味を示す様子は珍しい。
私にとっても伊織君と一緒に過ごせる時間が増えて嬉しいし、春子ちゃんには感謝だ。