君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】



下駄箱から靴を出して代わりに上履きをしまい、玄関を出ようとしたとき。


「っ……、ぐす……」



廊下から女の子の泣き声が反響して聞こえてきた。


もしやと思いつつ顔を上げると、さっき伊織君に話しかけていた女の子が廊下を歩いて通り過ぎていった。


ふられ、たんだ。


伊織君との接し方その3、彼に決して好きと言っては、いけない。


伊織君は殆どのことに対して『いいよ』と言うが1つだけノーと言うものがある。


それが女の子から『好き』と言われることに対してだ。


どんなに女の子が可愛かろうと性格が良かろうと『好き』の気持ちには、応えてくれない。


『好きです、付き合って下さい』に対する返事は、必ずノー。


だから女子の間では暗黙の了解みたいなものがある。


もし伊織君を本気で好きになってもその気持ちを伝えてしまったら、全ての関係が終わるから言わない方がいいと。


しかし頭では分かっていても心は、本能は抑えきれなくなる。


伊織君への好きが積もりに積もった時、やはりどうしても伝えずにはいられなくなる子が多い。


でも、言ってしまったら。

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