君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】



人に話せるようになるまで、どれだけの力が必要になるだろう。


「だから、俺も。ずっと亜紀のこと愛し続ける。誰かに好きって言われても、応えられない」


伊織君が好きと言われても誰とも付き合わない理由は、これだった。


それは揺るぎない誓いのように思えた。


……でも、ねえ伊織君。



それじゃ、見えない鎖に繋がれてるように思えるよ。


愛する人に触れることすらできない寂しさを埋めるために、快楽でその苦しさを紛らわすために。


誰かと熱を共有する。


「森野さんが言った通りだよ。つい思い出すんだ。亜紀のこと」


「伊織君、息苦しくならない?」


「ならない」


何の迷いも、なかった。


ああ、そうか。


私のちっぽけな世界が伊織君中心で廻っているように。


伊織君の世界もまた、お姉さん中心で廻っているのだ。


「俺が愛してるのは、亜紀だから」


お姉さんが、羨ましい。伊織君に愛してもらえるお姉さんが、心底羨ましい。

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