君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
「だから、来週の小テストだるいなって話」
「ああ、英語の?裕貴苦手だもんね」
「俺は一生日本から出るつもりないから英語なんて使わねぇのに」
「いやそういう問題じゃないよ」
バカだなぁ、と呆れたように笑う顔に胸の奥がチリリと熱くなる。
惚れた弱みというやつか、この笑顔1つでさっきまで永瀬に気を取られてたことへの不満も消えていく。
――香里を意識し始めたのは中3のときだった。そしてたまたま一緒の高校に入学。
同じクラスになってから香里に対する感情の正体に気づき、2年の今に至る。
もし高校が違っていたら好きと自覚することもなかったかもしれないと思うと、柄にもなく運命か何かかと考えてしまう。
中学のときクラスも違ってろくに会話こそしなかったものの、お互い存在は認識していたからすぐに打ち解けたし話もするようになって。
徐々に距離をつめていけると思った、ら。
「あ、森野さん」
「っ伊織君」
ついさっきまで女子に囲まれていた永瀬が、いつの間にかふらっとあらわれた。
話しかけられた香里の声のトーンが少し高くなる。分かりやすいんだよお前は。
「今日、放課後春子ちゃんに水あげる?」
春子ちゃん?誰だそれ。