君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】



「うん、あげるよ」


「そっか」


すっと口角を上げて満足げに頷き、また自分の席へ戻っていった。


たった一言二言のやりとりにも関わらず、香里の表情は嬉しそうにしていて。


……そう。香里との距離を順調につめていけるという考えは、永瀬の存在によって崩されたのだ。


「春子ちゃんって誰だよ、水やりって?」


「春子ちゃんのこと忘れたの?先生がもってきたマーガレットだよ。私の席の近くに鉢植え置いてあるでしょ」


「それと永瀬が何の関係があるわけ」


「うーん、春子ちゃんが水やりされてる様子を見たいんだと思う」


「……あいつの考えがよく分かんねぇけど」


「伊織君、春子ちゃんのこと気に入ってるみたいだから」


そう言う香里の目には愛おしさが滲んでいる。永瀬が花を見つめてる姿を思い出しているんだろうか。


俺には、というか永瀬以外には滅多に向けない顔をして。


確かに永瀬は見た目からして女子にモテるけど、香里が永瀬に対して想いを寄せるのはそういう理由じゃない気がする。


別の理由があって、いつも永瀬を目で追っているんだ。

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