君と罪にキス【加筆修正・番外編追加】
目が伏せられるときに影を落とす睫毛や、淡く色づいた唇とか。
「……から、この式に代入して……って、聞いてますか裕貴サン」
「んー、聞いてる聞いてる。最小値と最大値を求めてから公式に代入するんだろ?」
「そうそう、ここまでできたらあとは簡単だと思うんだけど。ちょっとルーズリーフに書き込んでも大丈夫?」
「全然オッケー。その方が分かりやすいし」
そう言えば、香里は少し腰を浮かせて前かがみになり『この方法でやった方が効率的だよ』と俺のルーズリーフに控えめに手順を書いていく。
必然的に距離が近づいた瞬間、ほんのり甘い香りが鼻孔を掠めた。
香里、香水とかつけるタイプだったか?
しかもこの匂いどっかで……、と頭の片隅で思考を巡らせ続けると。ある男の顔が頭に浮かんだ。
「……永瀬」
「え?」
「永瀬と同じ匂いがする」
「伊織君と?」
そうだ、この甘い香りは永瀬のものなはず。詳しい種類は知らねぇけど、柑橘系っていうよりは何かの花とかバニラっぽいやつ。
「何でお前からあいつと同じ匂いがすんの?」
「……してるかな?あ、もしかして春子ちゃんの匂いと間違えてるんじゃない?」