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雅さんが持ってきてくれた柔らかな寝間着に着替え、ベッドにもぐりこむ。
本当は頭なんて痛くないし、眠くもない。
雅さんが夕飯が用意できたと呼びに来るまで、私はただ天井を見つめて過ごした。

「すみません。すっかり良くなりました。緊張していたみたいです」
心配そうに私の顔を覗き込む雅さんに対して申し訳なくなり、私は弱々しくほほ笑んでみせた。

「少し髪が乱れちゃったわね。梳いてあげるわ、ちょっと待っててね」
断る間もなく雅さんは私を鏡の前に座らせ部屋を出ていき、すぐに何かを持って戻ってきた。
「私ので申し訳ないけど」
雅さんはそう言って、私の髪を櫛で梳きはじめた。
「初めて会った時から思っていたけど、綺麗な髪ね。真っ黒で艶々して」
雅さんと鏡越しに目が合う。雅さんの口元は微笑んでいた。


髪を整えてもらい終り、雅さんに連れられて食堂に向かうと、両親はすでに席についていた。

「体調が悪いならちゃんと出かける前に言いなさいね。」

母が静かな声で言った。

「聖也もさっき帰ってきたの。今来ると思うわ」

雅さんが言うと同時に、若い男の人が食堂に現れた。

「こんばんは」

聖也さんが私に微笑みかける。

「具合、もう大丈夫ですか?」
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