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『家』に帰ると、雅さんが笑顔で迎えてくる。
「おかえりなさい。」
雅さんは大体家では花の世話をしていて、
料理や掃除などいわゆる家事らしい家事をしているのを見たことがない。
当然私にも何もさせず、時折庭の花の水やりを頼まれたり、雅さんが活けた花の感想を求められたりするくらいだ。
何のためにここにいるのか、疑問にすら感じることがある。

「灯里さん、薔薇を食卓に飾りたいの。着替え終わったら切りに行くの手伝ってくれるかしら?」
雅さんはいつも通り柔らかな微笑を浮かべたまま私に言った。
この人の表情から微笑が消えるのを、あまりみたことがない。
「はい。すぐ戻ってきます」
最初こそ百川家の人々から嫌われようと思ったけれど、雅さんのほほ笑みを前にすると、そのような悪意が溶かされ小さく消えていき、結局は素直に従ってしまう。
むしろこの人をないがしろにすると、恐ろしいことになるような、そんな気もした。
夫の浩一さんにしろ、息子の聖也さんにしろ、この家に関わる人は全て、この雅さんという女性に逆らうことが出来ないようにすら見えた。
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