per*effect:gene
「灯里、それでいい?」
ぼーっとしているところに急に話しかけられて、私は思わず
「うん。い、いいよ!」
と何も考えずに答えてしまった。
「本人もこう言っていますし、それでは宜しくお願いします。」
「粗相のないようにしなさいよ」
父親と母親の言葉にハッとなる。
「え、あの、お母さん?」
「あら、いまいいって言ったでしょう。来週からしばらく百川さんのお宅で暮らすって」
そんな!
私は口を開きかけたけれど、母親が眉間にしわを寄せたのを見て、うつむいた。
「ちゃんと挨拶しなさい。」
母親に促されて、私は力なく
「よろしくお願いします。」
と頭を下げた。

デザートは大好物のカタラーナだったけれど、味がしない。
結局私と聖也さんは一言も言葉を交わさずに、両親もそのことを気に留めずに、両家の顔合わせが終わった。
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