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新しい生活

両親に連れられて着いた先は、ツタが絡まるレンガの塀に囲まれた大きな家。
今日から私はしばらく将来嫁ぐことになる百川家でお世話になるのだ。
梅雨も明けて、キラキラ輝く7月始めの太陽の光を受けた白い家は、両親にはとても美しく見えているのだろうけれど、私にはどこかすりガラスを通して見ているかのように歪んで目にうつる。

「素敵じゃない。灯里はちっちゃいときからレンガがある家に憧れてたもんね。」

何が嬉しいのか、母親は笑顔で私の肩を抱く。

もうレンガ造りのおうちに憧れていた私ではない。

今の私はこれから始まる生活におびえる18歳の私。

『婿の家での同居』

婚前の同居は甘い生活を予感させるようでいて、本来の目的は私が本当に健康な身体であるかを調べる『お試し期間』に過ぎない。

持病があって寝込んだりはしないか?

生活態度はきちんとしているか?

仮病をつかったり、わざとだらしなく振るまったりして百川家の人間に嫌われることだって出来る。

(この結婚から逃れたければそのような逃げ道だってあるんだよ。)

私は自分に言い聞かせ、百川家の門をくぐる。

広い庭の一角にさくラベンダーのむせ返るような匂いに、私は思わず顔をしかめた。
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