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「いらっしゃい、灯里さん。」

柔らかな笑みを浮かべた雅さんに迎えられる。
応接間に通され、私は両親と百川夫婦がにこやかに挨拶しあうのをぼんやりと見ながら出された香りのよい紅茶を口に含んだ。
聖也さんは今日は大学に行っていて、夜に帰ってくるらしい。

「灯里、ちゃんと挨拶して」
「至らないところばかりですが、今日からどうぞ宜しくお願い致します。」
私は抑揚のない声で言う。

気に入られなければ運が良ければ破談だ。

愛のない政略結婚から逃れられる。

「灯里さんの部屋、用意してあるのよ」

雅さんの声色は暖かかった。

「本当に良くしていただいて。」
大人たちの会話が鬱陶しい。
私はうつむいて目を閉じた。

「灯里さん、どうしたの?」

雅さんが尋ねる声が聞こえ、顔をあげると、彼女は心配そうに私を見ていた。

「すみません。今朝から頭痛がひどくて」
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