イジワル御曹司に愛されています
かっこいいなあ、と純粋に思った。鮮やかで親切で、押しつけがましくなくて。

もしかして都筑くんて、相当かっこいいよね…。まあ、だからこその、あのもてぶりだったんだろうけど。

一歩踏み出すごとにうっと呻きながら、初診外来の受付をして、待っている間にもまたぼんやり考えた。

とにかく、ありがとうって伝えなきゃ。


* * *


早めに帰宅すると、郵便受けに高校の同窓会の詳細案内が入っていた。年明けに、学年全体で行われる同窓会だ。ずいぶん前に案内が来て、そういえば参加の返事を出していた。

あかねと一緒に、何人かの女の子と好きだった先生に会いに行こう、くらいの気持ちだったんだけれど、そうか、同窓会…。

都筑くんは、来るのかな。


「痛い」


痛い、痛い、痛い…。

オフィスでは我慢していたものの、部屋で一人になると、こらえきれずに弱音が漏れる。痛い痛い。

ベッドに寝そべって、足元に布団と枕を積んで、その上に足を乗せた。病院で巻いてもらった包帯と湿布で、いくらか楽にはなっている。


いつの間にかそのままうとうとしていたらしく、空腹で目が覚めた。

時計を見れば、11時過ぎ。そういえば痛みで食欲がなくて、夕食をちゃんととらなかったのだ。

仰向けになったまま思案する。冷蔵庫の中には明日の朝のヨーグルトしかない。足を引きずってコンビニまで行くか、このまま寝てしまうか…。

どうにもおなかがすいているのと、ついでに気の紛れる雑誌でも買おうと思いついたのとで、行くことにした。そもそも夜のコンビニでぶらぶらするのが好きなのだ。


もこもこした部屋着にコートを羽織って、スエードのローファーを履く。相変わらずひょこひょこしながら、マンションを出て駅のほうへ。

一人暮らしをしていると、絶えることのないコンビニの灯りは心強く、気持ちの拠り所にすら感じられてくる。店内に同世代の女の人がいたり、店員さんがてきぱきしていて優しかったりするとなお安らぐ。

とはいえ今日は足が痛いので、ささっと食料と雑誌を買って終了。

駐車場に一台の原付が停まっていて、そのそばに男の人が立っていたのは視界に入っていた。でもその原付がついてきていると気がついたのは、マンションの近くに来てからだった。
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