例えば危ない橋だったとして
えっ、何──
驚いて力の掛けられている方向を見上げた瞬間、受話器を奪われた。
「……お電話代わらせて頂いたんですけども、黒澤と申します」
黒澤くんが隣に立って、電話口の相手と喋っていた。
「はい、えぇ。その確認というのは、ルートの確認も含めてして頂いているということでよろしいんでしょうか?」
呆然とその様子を眺めているわたしは、きっと今にも泣き出しそうな顔をしていたと思う。
「はい、ではご連絡お待ちしております。失礼致します」
黒澤くんが受話器を置く。
助けてくれた……。その事実に、心が震える。
ただただ、嬉しかった。
「……黒澤くん、ありがとう」
「ああいう電話は、すぐ代わってくれたら良いから」
黒澤くんの優しい言葉に、胸が高鳴る。
だけど、どうにも相手の態度が腑に落ちなくて、眉をしかめた。
「……悔しい。女だからって舐められてる。黒澤くんが代わったらすぐ引き下がって……」
「……そこに心を割く必要は無いと思うけどな。そんな理不尽な攻撃を受ける労力がもったいない」
黒澤くんが心配と牽制の入り混じったような眼差しを、わたしに注いだ。
「俺とか、岩井さんだって、いつでも頼って貰ったら良いですよね?」
黒澤くんは立ったまま、前の席の岩井さんに顔を向け、投げ掛ける。
「おっおう! いつでも受けて立つ! 大体最近の営業は、設備を舐め腐ってんだよなー」
岩井さんも鼻息荒くガッツポーズを作ってくれた。
わたしは若干複雑だったけれど、彼らの優しさに微笑みを返した。