例えば危ない橋だったとして

しばし沈黙した後、黒澤くんが口を開いた。

「……俺の恥ずかしい話を聞かせてやろうか」
「恥ずかしい話!?」

わたしはびっくりして体が跳ね上がりそうになった。
まさかこの黒澤くんに恥ずかしい話があろうとは!?
黒澤くんがわたしの髪を撫でながら、はにかんだ。

「んーと……俺、好きな人と付き合ったの初めてなんだ」

その言葉を飲み込むのに数秒要した。

「……はい!? ……どういうこと?」
「言葉のままの意味だけど」

「いや……だって……黒澤くんなら、選び放題でしょ……?」
「そうじゃないんだな、これが」

わたしは動揺を隠せず、目の前の人を改めて見上げた。
この美しい人が、好きな人と付き合えない……? なぜ。

「俺の好きな人は、俺に興味なかったからさ。榊だって、そうだったでしょ」
「……だって、黒澤くんがわたしに興味あると思わないよ」

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