例えば危ない橋だったとして
初めての一面

朝。またもやわたしは、ひっそりと玄関のドアを開けた。
2ヶ月ぶりの朝帰り……そして今回も、リビングからテレビの音が聞こえる。

「おかえりー」

お母さんが振り返り、にこやかに微笑んだ。

「遂に上手く行ったの!?」
「……ま、まぁ……」

「良かったじゃない! 一度連れて来なさいよ!」

満面の笑みでいきなり爆弾を投下して来るので、おののいてしまった。

「だから、付き合ったばっかだって!」
「え~良いじゃない~どんな子か見たい~」

「駄々っ子か!」

お母さんとぎゃあぎゃあ言い合っていると、背後から足音が近付いて来た。

「そうだよ一千果……一度連れておいで」

「お、お父さん……」

お母さんと台詞が重なる。

お父さんは起き抜けのパジャマにガウンを羽織った姿で、コーヒーのカップを手に、普段通りの微笑を浮かべていたが、何となしに眼鏡の奥の目が怖かった。

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