例えば危ない橋だったとして

例によって協力会社の東條さんがなかなか捕まらず、終業30分前になってようやく連絡が取れた。

「そうしましたら、地下化の工事は無事に完了されたということですね。ありがとうございます」

受話器を置き、システムで登録の設備の変更を加えた。
最後に設備構築の管理簿に完了を入力し、全てが終了となる。

「黒澤くん! 遂に終わった!」
「おー! この件長かったもんなー。お疲れ」

達成感で若干はしゃぎ気味だったのは否めない。
通りがかった岩井さんに、微笑ましそうに声を掛けられた。

「ふたり仲良いよねー」
「そうですかね……」

思いがけない言葉に照れつつ返しかけたわたしの言葉に被せるように、皐がにこやかに言ってのけた。

「付き合ってるんです」

!?

「え……あっ!? やっぱそうだったんだー!?」

顔を赤くしてうろたえる岩井さん。

……この人今、サラッと爆弾発言したよね!!?

「あはっ……何言ってんのー黒澤くん! 冗談きつーい! ちょっと来て」

彼の手首をとっ掴んで廊下へ逃げたわたしは、鬼の様な形相をしていたことだろう。

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