例えば危ない橋だったとして

エレベーターホールで、今度はわたしが皐を待ち伏せした。
わたし達が付き合ったあの日のように。

今日を逃すと、きっと月曜日まで会えない。
もう付き合う前のように、週末を悩み抜くのは嫌だった。
電話は出てくれないかもしれないし、顔が見えないと気持ちも伝わらないと思った。


ドアの開く音に続き、足音がこちらへ近付いて来た。
コートの袖に腕を通しながら現れた皐は、わたしの存在に気付くと顔を上げた。
真顔になり、黙って足を止める。

「……ちゃんと、話そう」

真っ直ぐに皐と対面し、告げた。

「………ちょっと、ひとりになりたいんだ」

エレベーターのボタンを押して、皐が呟いた。

「……それ、本心?」

エレベーターがやって来て、扉が開いた。

「……本心だよ。じゃあ、お疲れ」

背を向けたまま口に出し、エレベーターに乗り込んだ。

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