例えば危ない橋だったとして
月日は流れ、あれから2度目の春を迎える。
4月1日。
出社早々、今わたしが指導している、昨年入社の有川(ありかわ)さんに質問を投げ掛けられた。
「あのー……今度来る係長って、榊さんの婚約者だって本当ですか?」
わたしは、はにかみながらも笑顔を返した。
「榊さんの付けてる指輪、気になってたんです……! えー、どんな人なんだろう……! 馴れ初め教えて下さいよ~」
「……ま、まぁそれはまた今度……」
「またまた照れちゃって~。じゃあ僕が代わりに」
「岩井さん、あることないこと吹き込まないで下さいよ」
女子トークに介入して来た岩井さんを一蹴したところで、始業を告げる鐘が鳴った。
年度始めの為フロア全体の朝礼が開始され、センター長の挨拶の後、転入者の紹介へと移った。
彼がマイクを受け取り、一歩前に出る。
「今日からまたお世話になります、黒澤皐と申します。この度、本日付けで設備登録担当へ異動となり、着任致しました。2年前までこちらで仕事をさせて頂いていたので、ご存知の方も多いかとは思いますが、改めてよろしくお願いします。前の部署では……」
朝礼が終了し、皐が我が部署へ足を踏み入れた。
この会社の通例では、結婚すればわたしはまた異動となるだろう。
だけど、このひと時の幸せが、胸に広がってゆくようだった。
目と目を合わせ、微笑みを向ける。
「おかえりなさい、黒澤係長」
「……ただいま」
彼は照れた面持ちで、満面の笑顔を見せた。
END.
Thank you sooooo much !!


