例えば危ない橋だったとして

微睡みから意識が冴え冴えと脳内に入り込み、瞼を上げた。
閉じられたカーテンの端から、朝日が一筋差し込んでいる。
隣に目を向けると、わたしの好きな人が静かに寝息を立てている。

夕べは少しルームサービスを食べただけで眠ってしまったので、お腹が空いた……。
頭にぼんやりとそんなことを浮かべながら、わたしは上半身を起こし頬杖を付いて、皐の姿を眺めた。
何て綺麗な寝顔と身体なんだろう……うっとりと見惚れ、その黒髪にさらりと指を通した。
すると閉じられていた瞼の隙間から僅かに瞳が覗く。

「ごめん、起こしちゃった?」
「ん……夢見てた……。新入社員の時の夢……。お前が……」

寝返りを打ちながら、再び瞼が閉じられる。

「わたしが?」
「……『わたし達にまで気遣ってたら、疲れちゃうよ』って、言ったんだ……」

「……そんなこと言った? わたし」
「覚えてないよな……」

瞼を閉じたまま、微かに笑みを零した。
再び眠りに落ちた彼を見つめ、この幸せな時間を、何度も噛み締めた。

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