例えば危ない橋だったとして

サラダや揚げ物をつまみながら、しばらく他愛もない話をした。

「なんだろう、この衣。美味いな」
「おかきみたいな……ごまも付いてるのかな」

えび揚げ団子をかじりながら箸を目の前まで上げ、黒澤くんが興味深そうに見つめる。

「今度真似しよう」
「えっ! 黒澤くん料理するの……!?」

「うん、週2日は当番だから」

ほとんど料理が出来ないわたしなんかよりよっぽど女子力高い……どれだけ完璧なの……と、そこまで考えて気付いた。
そうか、お母さんいないんだった……。
黒澤くんの背負っている、色々な物を思った。

『色々持ってる荷物を、分けられる人が居てくれたら良いなって、私は勝手に思ってるんですけど』

更ちゃんの言葉が頭の中に浮かんだ。

『……先輩なら、寂しさをわかってあげられるんじゃないですか?』

そうなのだろうか。
わからなかったけれど、そうであれば良いな、と思った。

< 75 / 214 >

この作品をシェア

pagetop