例えば危ない橋だったとして

「な……何やってんですか? 先輩」

更ちゃんの最初の感想は、わなわなと震え出しそうな呆れ声だった。

「何でそこで泣いちゃうかなぁー!? ふたり明らか両思いじゃないですか! 何故に離れる必要が!?」
「いや……それは、黒澤くんを傷付けたわたしが悪い……」

「今からでも間に合いますよ! ちゃんと話し合った方が良いです!」
「でも……わたし、黒澤くんに笑顔で壁作られてるし……」

自分で話しながら泣きそうになっているわたしに感づいた更ちゃんが、気まずそうに黙った。
わたしは振り返りながら、少しずつ言葉に出す。

「本当、どうして怖くなっちゃったんだろう。黒澤くんと一緒に歩んで行きたいって、確かに思ったはずなのに……」

わたしは自分で自分の気持ちがよくわかっていないことを感じ取った。
自分がわからない気持ちを、相手がわかるはずもないことも。

「……ねぇ、何か頼もうか! アヒージョは? バケットも」

わたしが暗いがために、更ちゃんの箸が止まっているのが見て取れたので、笑顔を作った。

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