例えば危ない橋だったとして

交互に曲を入れて歌い始めた。

そういえば、黒澤くんとはカラオケ行ったことないな……何歌うんだろう。
更ちゃんが歌っている間、画面を見つめていると、いつしかそんなことを考えていた。

寝ても覚めても黒澤くんのことばかり考えている。
そんな自分に気付くや否や、顔が熱く火照って来た。
そして、悲しくて視線を落とした。

更ちゃんが歌い終わり、次の曲のイントロが流れ始める。
明るい恋人同士の歌。楽しそうで良いなぁ……その様子を、頭に思い浮かべながら歌い出した。
すると、何やら声に嗚咽が滲んで音程が危うい。

あれっ?わたし……。

「うっく。ひっく」

涙がボロボロ溢れて、顔を抱え俯いていた。

「先輩!」

更ちゃんが心配そうに身を乗り出す。
カラオケのインストゥルメンタルの音だけが鳴り続けた。

しばし黙っていた更ちゃんが、声を荒げる。

「……そんな泣くくらいなら、何でちゃんと好きって言わないんですか!」
「!」

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