クールな社長の溺愛宣言!?
 ――ため息をつくと幸せが逃げていくって、きっと本当だ。

 ふとそんなことを考えながら、手元の履歴書をもう一度見る。

 ――確か、これで十二枚目。つまり十二社から『要らない』と言われたことになる。

 いや、転職エージェントから紹介された案件も含めると、もっとだろう。何社も連続して落ち続ける私に、エージェントはあてが外れたと思ったのだろうか。最近では紹介自体してもらえなくなった。

 ――前の仕事を辞めて三カ月。いいかげんそろそろ次の仕事を見つけなければ……。

 前職と同じ秘書の求人は、ほとんど大手の企業からのものだった。前職にこだわっていては、いつまでも仕事が見つからない。規模も職種も考え直して、もっと色々な会社に目を向けたほうがいいだろう。

 失業手当をもらうことも考えたが、できれば仕事の勘が鈍(にぶ)らないうちに新しい仕事に就(つ)きたかった。

 まさかこの歳でもう一度、就職活動の苦しみを味わうことになろうとは……。

 またため息をつきそうになったが、私の中の幸せを逃がすまいと、ため息を呑み込んで顔を上げる。

 すると、週刊誌の中吊(なかづ)り広告が目に入った。

〝急成長企業! クレアシオンの秘密に迫る〟という大きな見出しと、長い足を組んで座る男性の写真が掲載されている。

 私よりも年上には違いないけれど、ずいぶん若く見える。向こうは気鋭の会社の社長、こっちはプー太郎か……。

 ――情けない。

 そんな単語が頭をかすめたが、すぐに追い出した。

 自分を卑下しても、しょうがない。これ以上ため息をつかなくて済むように、私は姿勢を正すと自分に気合を入れた。
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