クールな社長の溺愛宣言!?
「本当ですかっ!」

「来週から出社してもらいたいんだけど、どうかな?」

「はい! 是非よろしくお願いします! なんでもやりますので!」

 目を輝かせて前のめりに食らいつく私に、目の前の男性は声を上げて笑っている。

「あはは、うちは人数が少ないから、そう言ってもらえると助かるよ」

 少し古ぼけた五階建ての雑居ビルにオフィスを構える会社に、私は面接に来ていた。企業に向けて会計ソフトの開発をする小さなITベンダーだ。

 そこでなんと、その場で採用されることが決まった。十五社目でやっと私を必要としてくれる会社に巡りあえた。

 ちょうど先月、就職試験の合間に簿記(ぼき)の資格を取得したから、会計ソフトを扱う会社の事務ならば、きっと役に立てるだろう。

 うれしくて顔が緩んでしまう。

「でも、本当にうちみたいな小さな会社でいいの? 君ならどこに行っても雇ってもらえそうなのに」

 部屋に入ってすぐの、衝立(ついたて)で仕切られた打ち合わせスペース。そこで私の向かいに座る、この会社『メトロ』の社長が、目の前で履歴書と職務経歴書をもう一度眺めながら不思議そうにつぶやいた。

「私は、ここでがんばりたいんです」

 せっかく採用が決まったのに取り消されては大変だと思い、必死にやる気をアピールした。

「そんなに必死にならなくても大丈夫。僕は君と働きたいと思っているから」

 にっこりと笑ったその顔を見て、私は胸を撫(な)で下ろす。
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