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――…

帰り際、エリカの母に大方の説明をしてから

結斗は神崎邸を後にした。

迎えに呼んでおいた車に乗り

自宅へ戻る。

その車内で

アリアがくすっと笑った。


「ユイったら、随分と子供の扱いが上手なのね」

「フランスに居たときは
やっぱり人形関連の事で
子供と関わることが多かったからね。
それでかな」


「ユイは優しいから、子供も自然と懐いてくるのよ」


偉大な家柄の、大きな宿命を継いだ者。

確かに、一見近寄りがたい空気ではあるが

結斗は基本的に優しくてお人良しな性格だった。

誰に対しても、怒る事など滅多になかった。

実際実年齢よりも、大人びた雰囲気。

それが彼の魅力でもあった。


「アリア。帰ったら君の事も診てあげるからね」


「そんなに心配しなくても私は大丈夫よ?
貴方が創ったんだから…」


その時ちらっと見た結斗の表情が

アリアにはいつもと違って見えた。

遠くを見つめた、寂しそうな顔…。

それは、アリアが今までに見たことのない表情だった。


(どうしてそんな顔をするの…?)


アリアには、その理由が解らないままだった。



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