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結斗が日本へ帰国してから一ヶ月の月日が流れた。

彼が創った『魔力人形』は沢山の人々に買われ

悩みを抱えやってくる依頼主の対応も全て引き受け

そして解決していく。

結斗の仕事ぶりは完璧だった。


「ユイ、疲れていない?
ずっと仕事ばかりしているじゃない」


「大丈夫だよ。
僕はそこまで弱くないよ?
それよりも
やらなきゃならない事をやらなくちゃね」


いつも笑っていて、心が読めない。

疲れている、とも、具合が悪い、とも、何も言わない。

アリアはそんな彼の事が心配で堪らなかった。


「アリア、今日はもう仕事ないから
たまには外でも歩こうか」


移動は車がほとんどな二人は

外を歩く事があまりなかった。

ここ一ヶ月の生活

まともに休んだ事などなかったかもしれない。


「そうね。行きましょう、ユイ」




――…



木洩れ日と暖かい風が心地良く

久しぶりにゆっくりと時間を過ごせた気がした。

結斗にとっての一ヶ月は

めまぐるしく過ぎ去っていく毎日で

こういった空気を吸うのも

本当に久しぶりのように感じた。


「気持ちいいわね、ユイ」


「そうだね。
こうして歩いてると
フランスに居た時を思い出すよ」


「ぇ…?」


表情はいつもとなんら変わらないのに

ほんの少し切ない声。


再び足を進める。

すると、少し先の白いベンチの上に

金髪の人形が置いてあるのがかすかに見えた。

それに気付いた結斗の表情が曇る。


「ユイ…?」


「アリア、ここで待ってて。
絶対来ちゃだめだよ」


そう言い残して、結斗は歩いて行った。




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