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数メートル手前で立ち止まる。

張り詰めた空気が、彼を緊張させた。


『こんなところでどうしたの?』


『……』


その人形に『共振』してみても

一向に返事は返ってこなかった。


『誰かに捨てられたの?』


『……』


『僕は「ドールマスター」
君達の主人だ。さぁ、話を聞かせて』


『ドール…マスター…?』


ようやく応えたその人形の声は

どす黒く、低く、かすれた声だった。

その声に周囲の様子が一転し、嫌な風が吹いた。

遠くで見つめるアリアにも緊張が走る。


『お前は…私を創った人間の一族か…!!』


『え……?』


人形の不可解な言葉と同時に

カマイタチの様なものが一瞬にして

結斗の左頬を、右肩を、右脚を切り裂いた。

切れた服が赤い血で染まっていく。


「…っ!!」


「ユイ…!!!」


駆け寄ろうとするアリアに

結斗は冷静に

少しだけ強い口調で言った。


「アリア!!来ちゃ駄目だって言ったでしょ?」


「……っ」



右肩を押さえ脚を引きずり、再びベンチに座る人形に歩み寄る。


『君は叶の人間に創られた魔力人形なんだね』


『そうだ。半端な想いで生み出され
「失敗作」だと罵られ、挙句に捨てられた人形さ!!
だから私は全てを憎むんだ!!』


『そうか…君には憎悪しかないんだね…』


ゆっくりと手を差し伸べる結斗。

その腕のいたるところを

生み出されたカマイタチが容赦なく切り裂き

赤い鮮血が流れる。

それでも結斗はその人形に優しく触れる。


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