とあるレンジャーの休日
17時前に並び始めた患者を、順番に中へ呼ぶ。
薫子は診療の補助に加え、窓口の事務までこなす最強のパートナーだ。
最初に中へ入ってきたのは、三軒隣に住む、中野のおばあちゃん。
紫乃が小さい頃から可愛がってもらっていて、持病のリウマチの薬を定期的にもらいに来ている。
中野のおばあちゃんは、診察室に入って来るなり、甲高い声を上げた。
「ちょっと紫乃ちゃん! 昼間一緒に歩いてた男の子、かわいい子だったねえ」
紫乃は唾を飲むのに失敗し、盛大にむせて咳き込んだ。
(げっ! あれを見られてた?)
「手なんか繋いじゃって! 若いっていいねえ、青春だね~」
紫乃はゲホゲホ言いながら、薫子の顔をチラリと見る。
すると彼女は意味深に微笑んで、「春は青かったか」などと呟いた。
「違うから! あれは歩が勝手にっ……」
「歩くんっていうの? あのかわいい子」
「おお。すでに呼び捨てでしたか」