シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 部室に戻ると、部長を始めとする先輩たちに大げさなほど心配され、その度に「大丈夫です」と答えるのがむしろ大変だった。
 わたしが歌詞をつけた曲は、細かい部分を航が調整中らしく、完成版を聴くことはまだできないという。
 亜依は先輩に交じってトランプゲームに興じ、遥人は一人、ベースを鳴らしていた。
 その姿はかっこよくて、交際を断ったのを後悔しそうになるほどだった。
 この未練を捨てきれず、未来にまで持っていってしまったらどうしよう。
 ノートを開き、離れ離れになってもまた惹かれ合う恋人同士の物語を書いた。

(繰り返す夢と夢)
(片方が落ちたときはもう片方がすくい上げる)
(逆のときも同じように、だから大丈夫)
(何度も出会い、何度もつながるうたかた)
(繰り返す縁と宴)

 歌詞の中で描く感情は本音じゃない。日記じゃない。
 作り物だからこそ書ける想いがある。願いがある。

 就寝時間が近づくにつれ、緊張で胃が痛くなった。
 わたしとつき合えないと知った遥人が、また衛藤先生のところへ行ってしまったら……。
 そう思うと、怖かった。
 点呼が終わり、みんなが寝静まっても、わたしは寝袋の中でまんじりともできずにいた。
 保健室で寝てしまったこともあり、全く眠気を感じない。
 暗闇に目が慣れると、誰がどんな寝相で寝ているかまで見分けがついた。
 もし遥人が起きて部室を出ていこうとしたなら、すぐにわかるはずだった。

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