シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 感心されてしまった。
 なるほど、わたしが普通に発言しても、航と比べて八年余計に生きてるから、人生経験の差がにじみ出てしまうのかもしれない。
 中二のわたしらしくない発言には気をつけなきゃと思った。

「あ、あの、ちょっと大人のふりしてみただけで、わたしなんて全然駄目だよ。偉そうなこと言う資格ない」
「いや、謙遜すんなって。未波のおかげで俺、なんか見えてきた。うん」

 航はすぐそばの教室に入ると、迷いなくひとつの机に向かった。
 キーボードを置き、机の中から取り出した紙に何か書き始める。
 まさに一心不乱という感じだ。
 これ以上話しかけて邪魔したら悪い。
 
「……わたし、先生のところ行って、その後、みんなのこと探してみる」
「おう」

 教室を出た。
 扉の上のプレートを見上げると、二年一組、自分が所属するクラスの教室だった。
 学校って不思議な場所だ。
 決して短くない一時期、当たり前のように毎日通い、朝から夕方まで授業を受ける。何の疑問もなく、同じ顔触れと椅子を並べて勉強し、テストで競い合う。
 そんな生活から離れた今、あの頃と変わらない建物を歩くのは、留守宅に忍び込むような背徳感がある。

 中学の校舎と高校の校舎は渡り廊下でつながっている。
 外は明るいのに、生徒の影が全然見えないのはちょっと気持ち悪い。
 天文部は合宿の時期をずらしたんだろうか。それとも校舎の屋上で、昼間から星を眺めているんだろうか。
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