シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
外に出ると、職員室でまとった冷気はすぐに蒸発した。
校舎を出たところに、飲み物の自動販売機がある。清涼飲料水を買った。
さえぎるものが何もない人口芝の前庭は、太陽に熱されてじりじりと温度を上げている。
わたしは、冷えたペットボトルを首筋に当てながら部室へ向かった。
前庭の端から細く伸びたアプローチ、その先にたたずむ木造の小屋。
亜依に連れられて、初めて部室にお邪魔した日を思い出す。
それまでも小屋の存在はぼんやり意識していたけれど、部室だとは知らなかった。警備員が住み込む家かなと思っていたのだ。
――もとは向こうの部活棟の一室を使ってたらしいんだけど。
回想の中で亜依が指を指した方角を、わたしは見つめる。
中高の校舎と向かい合う位置に建つ平たい建物は、窓が多い。
ほとんどの部が部活棟に部室を持っている。
――周りの文化系から、うるさいって苦情が来たんだって。軽音部が音を出すのは当たり前じゃんね? 長屋から出ていってくれ、って追い出されたらしいよ。江戸時代かっつーの。
――いつの話?
――十年くらい前って聞いた。音楽室はオーケストラ部やマーチングバンド部が押さえてるし、講堂はライブ気分を盛り上げるにはいいけど、他の校内行事を考えると、常に機材を置いておくわけにはいかないし。
行く当てのなくなった当時の部員たちは途方に暮れただろう。
――それで?
――卒業生の寄贈で、小屋が移築されたんだって。総理大臣を輩出した名家の卒業生からの、太っ腹な贈り物。スケール大きいよねえ。
――立派な先輩がいて助かっんだ?
――うちのガッコ歴史だけはあるからねー。祖父母の代から三代続けて通ってる子も多いし、由緒ある家柄っていうの?
校舎を出たところに、飲み物の自動販売機がある。清涼飲料水を買った。
さえぎるものが何もない人口芝の前庭は、太陽に熱されてじりじりと温度を上げている。
わたしは、冷えたペットボトルを首筋に当てながら部室へ向かった。
前庭の端から細く伸びたアプローチ、その先にたたずむ木造の小屋。
亜依に連れられて、初めて部室にお邪魔した日を思い出す。
それまでも小屋の存在はぼんやり意識していたけれど、部室だとは知らなかった。警備員が住み込む家かなと思っていたのだ。
――もとは向こうの部活棟の一室を使ってたらしいんだけど。
回想の中で亜依が指を指した方角を、わたしは見つめる。
中高の校舎と向かい合う位置に建つ平たい建物は、窓が多い。
ほとんどの部が部活棟に部室を持っている。
――周りの文化系から、うるさいって苦情が来たんだって。軽音部が音を出すのは当たり前じゃんね? 長屋から出ていってくれ、って追い出されたらしいよ。江戸時代かっつーの。
――いつの話?
――十年くらい前って聞いた。音楽室はオーケストラ部やマーチングバンド部が押さえてるし、講堂はライブ気分を盛り上げるにはいいけど、他の校内行事を考えると、常に機材を置いておくわけにはいかないし。
行く当てのなくなった当時の部員たちは途方に暮れただろう。
――それで?
――卒業生の寄贈で、小屋が移築されたんだって。総理大臣を輩出した名家の卒業生からの、太っ腹な贈り物。スケール大きいよねえ。
――立派な先輩がいて助かっんだ?
――うちのガッコ歴史だけはあるからねー。祖父母の代から三代続けて通ってる子も多いし、由緒ある家柄っていうの?