シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 わたしが部室で時間をつぶすようになったのは、他に居場所がなかったからだ。
 はっきりいじめられたわけではない。
 持ち物を隠されたり、みんなの前で笑い者になったことはない。
 ただ教室にいると苦しかった。
 声の大きな権力者グループと、こそこそ身を縮めているのが当然として扱われる最下層まで、吸っていい酸素の量まで違うかのような階級社会。
 空気を読んでばかりいると、めまいがした。
 何度も教室を抜け出した。
 でも、具合が悪くないのに保健室に逃げ込むのもくやしい。頻繁に仮病を使っていたら、本当に倒れたときにちゃんと介抱してもらえないかもしれない。不安から来る計算もあり、保健室を避けるようになった。
 軽音部の部室が、わたしにとって一番安らげる場所になった。
 外から見れば無骨なログハウスだけれど、中には街のレンタルスタジオも顔負けな防音ブースがふたつと、くつろげる広間があり、二階部分はロフトになっている。
 名家が使っていた山荘をそのまま移築したそうで、水回りも考慮され、自炊可能な台所設備もある。
 広間は教室一個分くらいの広さがあり、床でごろごろしていても誰も何も言わない。

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