シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「矢淵さん」

 部室に入ろうとすると、後ろから声をかけられた。
 部長の野呂剛(のろ・つよし)先輩が複数の瓶の入った黄色いケースを抱えていた。
 中身はビール瓶ではなく、ノンアルコールの炭酸飲料のようだけれど、ざっと数えたところ二十四本ある。さぞ重いだろう。
 わたしは扉を手で押さえて言った。

「お疲れさまです。部長自らパシリですか……」
「怖い言い方しないでよ。福利厚生みたいなものだよ。部員のみんなには気分よく活動してもらわないと」

 そう言って笑うと、部長は左右のかかとを使って器用に靴を脱ぎ、部屋に上がった。
 教室一個分くらいの広さのある部室。
 冷房の効いた室内に入ると、流れた汗の分、身体が冷えてくる。
 散らばった靴を並べていると、上から声が降ってきた。

「未波」

 亜依がドラムスティックを手に、びっくりした顔でわたしを見ていた。

「本当に来るとは思わなかった」
「今から行くって返事したよ」
「うん。見たけどさ」

 信じていなかったらしい。
 そんなに中二の頃のわたしって、嘘つきだったっけ。

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