シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「やっぱりいい」
遥人に背を向けて、歩き出そうとしたわたしを、待てよ、と鋭い声が止める。
ゆっくり遥人を振り返る。
遥人は言いにくそうに、口を開いた。
「お前、名前何だっけ?」
「……同じクラスなのに」
ふざけているわけではなく、本当に遥人はわたしの名前を思い出せないようだった。
一緒のクラスで、一緒の部活に入っているのに、遥人はわたしを認識していなかった。
「お前」という親しげな呼び方も、ただ名前を思い出せないからそう呼んでいただけなんだ。
くやしい。
自分の存在感の軽さが恥ずかしい。
情けなかった。
十四歳のわたしがかわいそうで、でも、もっとしっかりしなよ、と叱りつけたい気分もあった。
「名前教えないなら、マラカス屋って呼ぶけど」
「マラカス……どうして?」
「先輩が演奏してるとき、マラカス振ってただろ」
「それは……」
盛り上げた方がいいと思ったから。
空気を読んで、その場に最適な行動を取ったつもりだった。
「もういい」
「おい! 名前は」
遥人に背を向けて、歩き出そうとしたわたしを、待てよ、と鋭い声が止める。
ゆっくり遥人を振り返る。
遥人は言いにくそうに、口を開いた。
「お前、名前何だっけ?」
「……同じクラスなのに」
ふざけているわけではなく、本当に遥人はわたしの名前を思い出せないようだった。
一緒のクラスで、一緒の部活に入っているのに、遥人はわたしを認識していなかった。
「お前」という親しげな呼び方も、ただ名前を思い出せないからそう呼んでいただけなんだ。
くやしい。
自分の存在感の軽さが恥ずかしい。
情けなかった。
十四歳のわたしがかわいそうで、でも、もっとしっかりしなよ、と叱りつけたい気分もあった。
「名前教えないなら、マラカス屋って呼ぶけど」
「マラカス……どうして?」
「先輩が演奏してるとき、マラカス振ってただろ」
「それは……」
盛り上げた方がいいと思ったから。
空気を読んで、その場に最適な行動を取ったつもりだった。
「もういい」
「おい! 名前は」