空色プレリュード
さすがに涙を流す私を見て、笹川くんも慌てた様子だった。

「ご‥ごめん!!そんなつもりじゃなかったんだ。明日、作って返すから泣かないで!」

違う‥そんなんじゃない‥。とても温かくなる気持ち‥

「違うよ‥。こんな風に接してくれる人、初めてで。私嬉しくてつい。」

また涙が頬をつたう。

「は‥橋村‥。」

「全然、嫌じゃないよ。笹川くんがおいしいて言ってくれて、こんな私をかまってくれて嬉しい。この一言につきるよ。」

すると笹川くんが手で私の涙を拭いてくれた。

「これぐらいのことで泣くなよバカ。俺、焦ったんだからな。」

そういうことを言う笹川くんだけど、顔は笑っていた。

「ごめんね。私、小学生の頃からみんなに気をつかわれて何もさせてもらえなかったの。みんな怪我させるのをおそれて誰も私に話しかけても来なかった。話しかけようとしても避けられた。‥そんな中でも、笹川くんだけは私に話しかけてくれた。私、すごく嬉しかったよ。ありがとう。」

すると笹川くんの頬が赤くなった気がした。

「べ‥別に、礼を言われるようなことを俺してないし。だから泣くなよ。」

「ごめん。」

「‥そういえば、橋村さんの名前は何?」

突然、笹川くんがそんなことを聞いた?

「えっ!?名前?」

「そう。君の名前。クラス名簿見た方が早いんだけどさ、俺は君の口から名前を聞きたいんだ。」

ドキッ!知らず知らずのうちに花音の心臓がはねる。

「か‥花音‥。」

「橋村‥花音さん?いい名前だね。そっか、それであの時カノンを弾いてたんだね。」

「ち‥違うよ!あれはたまたまで‥。」

すると笹川くんは真面目な顔になった。

「橋村は‥本当に自分のことを他人に見てもらいたいんだね‥。」

「えっ?」

「認めてもらいたいんだなて思ったよ俺。‥俺には分かるよ。言葉にしなくても橋村の言葉。痛いぐらいに‥。」

「さ‥笹川くん?」

「橋村はもっとしゃべったらいいじゃん!クラスの中にはお前と話したいと思ってる奴が絶対にいるよ!」

「そ‥そうかな?」





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