空色プレリュード
すると笹川くんが頬を赤らめて言った。

「せ‥先生!!そんな母親みたいなこと言わないでくださいよ!俺はもう大丈夫ですし、一人で帰れます!では失礼します!」

「また、しんどくなったら来なさい。」

「はい。その時はまたよろしくお願いします。行こ、橋村。」

そう言うと私と笹川くんは保健室を後にした。



「なぁ、これから音楽室に行ってもいい?」

「えっ!?」

廊下を歩いているとき、笹川くんはそんなことを聞いた。

「行くんでしょ?音楽室に?」

「う‥うん‥。」

「じゃあ決定ね!ほら、早く早く!昼休み無くなっちゃうよ!」

笹川くんはいつもの笑顔で私を促した。



‥で、なぜか私と笹川くんは音楽室で昼ごはんを食べています。私は弁当で笹川くんはおにぎりとパン。

ちょっとこの空気に私は戸惑っています。

だから、思い切って沈黙を破ってみた。

「み‥みんなと‥た‥食べなくて、いいの?」

言葉がつっかかってばかりの私。笑われるかも‥。と思ったけど、笹川くんはそうでもなかった。

「いいんだよあいつらは。いつも一緒に食べてるし。たまには一人で食べるのもいい。」

「そ‥そっか‥。」

私は弁当に目を戻し、卵焼きを食べようとした。‥が、次の瞬間

「1個もーらい!!」

目にも止まらぬ早さで笹川くんが私の弁当から卵焼きをとって食べていた。

「あー!!!私の卵焼き!!今日の自信作だったのに!!」

「自信作だけあってうまいよ橋村!ピアノだけでなく、料理も上手いんだな!」

「返してよー。私の卵焼き‥。笹川くんのバカ!!!」

言っていてなぜか涙が出た。


それは卵焼きをとられたから?


‥いや違う。そんなんじゃない‥。







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