空色プレリュード
「ううん。違う。そんなんじゃない。」

すると結ちゃんの目から一粒涙がこぼれ落ちた。

「結ちゃん‥。」

「ごめん。‥自分でも心の整理はしたつもりだったんだ。だけど‥涙が出る。」

涙をふきながら結ちゃんは言う。

「体育祭の日にね。私、言ったの樹生に。好きだよ。て。だけど、ふられた。今は部活に専念したいて。部活が大事なのは分かってる。だけど‥ふられても、あいつのことが好きで、仕方ない。忘れられないの。」

結ちゃんの目からは涙がとめどなく溢れだした。

「こんなにつらいならやめたらいいて思ったよ。けど、忘れることの方がもっとつらい。私の心の中にはあいつしかいないの。私は樹生しか考えられないから。」

私は結ちゃんを抱きしめた。

「‥花音?」

「ごめん。全然、気づかなくて。結ちゃんの気持ち、分かってあげられなくてごめんね。結ちゃんが悲しいなら私も一緒に泣く。」

「ありがとう、花音。‥私て重たい女なのかな?樹生にとって私は重たい?」

「そんなことない。結ちゃんの真っ直ぐな想いは樹生くんにも届いているはずだよ。結ちゃんの気持ちは重くなんかない。」

「‥‥‥ッ‥。ヒック‥。」

結ちゃんはしばらく泣き続けた。





「ごめん。泣いちゃって。」

泣き腫らした顔で結ちゃんは言った。

「大丈夫だよ。泣きたかったら泣いたらいいから。いつでも相談に乗るよ。」

「ありがとう。今日は寝ようか。」

「そうだね。お休み、結ちゃん。」

見ると時計はもう12時30分だった。

「お休み。」

私も結ちゃんも布団に入った。

しばらくして‥

「ねぇ、花音。」

「何?」

「私、花音が友達で本当によかったよ‥。」

「‥私もだよ、結ちゃん。」

そこまで言ったとき、急に眠気に襲われた。

私の記憶はそこまでだった。




「花音、おはよう!朝だよ!」

結ちゃんの声で目がさめた。

「あっ‥おはよう!」

今日も朝からいい天気だった。

花音が起きると、朝食がもう出来ていた。

「す‥すごい!!結ちゃんが作ったの!?」

「うん。家でもたまに作ってるから楽勝だよ。それに昨日、愚痴っちゃったしその‥聞いてくれた、お礼にね。」

結ちゃんが恥ずかしそうに言った。

「そんなの気にしなくていいよ。早速、食べよう!」

「うん!」
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