泣かないで、楓
僕と吉伸先輩は、事務所のオフィスルームへやってきた。オフィスルーム、とみんなは言っているものの、ダイニングスペースに事務机が3つ、応接用のテーブルとソファーがあるだけの、簡素な空間だ。
壁一面には、歴代のヒーロー戦士のポスターが並んでいる。出入り口の扉付近に、ショーの予定が書かれたホワイトボードがかかっていた。
吉伸先輩は、指先でホワイトボードをトントン、と叩いた。差した箇所は、僕らがこれから行く『アイムレンジャーショー カワピア遊園地』と書かれた所だった。
「恭平、お前ずっと、戦闘員ばかりじゃろ?」
「そ、そうですね」
「今日のショー、ヒーローをやらんか?」
「えっ!?」
吉伸先輩の突然の申し入れに、僕は声が裏返った。
「いつまでもそのままじゃぁ、成長せんけんのぉ。どうじゃ?」
「そ、そうですね……」
さっき、ロン毛の先輩に言われた言葉が胸に響く。確かに僕は覚えが遅く、要領も悪い。今までは戦闘員として無様にやられればよかったので、多少ミスっても平気だったが、今度はそうはいかない。テレビに出ているヒーローとして、闘わなければならない。
子供の夢を壊しちゃいけない。それが、指命だ。その事を思うと、嬉しさよりも、正直戸惑いが大きい。
僕は、唇をギュッと噛みしめた。
壁一面には、歴代のヒーロー戦士のポスターが並んでいる。出入り口の扉付近に、ショーの予定が書かれたホワイトボードがかかっていた。
吉伸先輩は、指先でホワイトボードをトントン、と叩いた。差した箇所は、僕らがこれから行く『アイムレンジャーショー カワピア遊園地』と書かれた所だった。
「恭平、お前ずっと、戦闘員ばかりじゃろ?」
「そ、そうですね」
「今日のショー、ヒーローをやらんか?」
「えっ!?」
吉伸先輩の突然の申し入れに、僕は声が裏返った。
「いつまでもそのままじゃぁ、成長せんけんのぉ。どうじゃ?」
「そ、そうですね……」
さっき、ロン毛の先輩に言われた言葉が胸に響く。確かに僕は覚えが遅く、要領も悪い。今までは戦闘員として無様にやられればよかったので、多少ミスっても平気だったが、今度はそうはいかない。テレビに出ているヒーローとして、闘わなければならない。
子供の夢を壊しちゃいけない。それが、指命だ。その事を思うと、嬉しさよりも、正直戸惑いが大きい。
僕は、唇をギュッと噛みしめた。