泣かないで、楓
 僕は古ぼけた黒いテレビの電源を入れ、ダイアル式のチャンネルを、ガチャガチャと乱暴に回した。

『化学戦隊 バクハツマン!!』

 TVには派手な爆風とともに、悪いヤツらを次々にやっつけるヒーロー戦隊の姿が、浮かび上がった。  
 
「よかった。間に合った」

 土曜の夕方は、必ずこの番組をかぶりつく様にして見る。そして夜は、じっとしていられず、布団の中でジタバタと動き回るのがお決まりのパターンだ。

「恭平、ちょっと」

 台所から、母親の声が聞こえた。

「忙しいの。後にしてよ」
『バクハツ レーッド!!』

 TVには赤い爆風とともに、戦隊ヒーローのレッドが現れた。

「うわーっ、チョー格好いい」
「忙しいって、テレビを観てるだけでしょ?」

 僕は母親の言葉を右から左へと聞き流し、目を輝かせながら、TVにくぎづけになっていた。
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