泣かないで、楓
「わー、広いステージですねぇ」

 僕と楓の間に、ちさとさんがひょっこりと現れた。

「恭平さん、今日はヒーローなんですか?」
「え、ええ。まぁ」
「凄いじゃないですか! ファイト、ファイトですっ」
「あ、ありがとうございます」

 ちさとさんに応援されると、何か嬉しい。僕はポリポリ、と頭を掻いた。

「そうなん? 恭平が戦闘員の方が、ウチはやりやすいんやけどな」
「そう言われても」
「まぁ、ええか。頑張ってな」
「う、うん。分かってるよ」

 楓に言われても、あまり嬉しくない。この差は何なんだろう。

「ホンマに分かってるんかなぁ……」
「な、何が?」
 
 僕の質問に、楓は無視をする様に、プイと視線をそらせた。

「楓さん、後でピンクの声を確認させてもらってもいいですか?」
「はい、お願いします」

 楓はショーのデビュー時より、ヒーロー戦隊のピンクに抜擢されていた。ピンクの声は司会のおねーさんの担当だ。ウチの事務所は舞台袖で演者が、その場で声を当てているのだ。

「じゃ、これ以上はお邪魔なので、ちさとはドロンしますね~」

 そう言うとちさとさんは、テケテケと走り去っていった。

「ふ、古い……」
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