泣かないで、楓
 ショーのリハーサルは、つつがなく終了した。つつがなく、と言う言葉には語弊があるか。「バカ!」「違う!!」「やめちまえ!!」と先輩たちに、何度キレられた事か。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 僕は呼吸を荒くさせながら、楽屋であるテントの中に入ると、すぐにブッ倒れた。

 1時間も屋根の無い炎天下の中、必死にアクションをしたのだ。僕は汗でビタビタになったTシャツを脱ぎ捨て、フラフラになりながら立ち上がり、最後の気力でTシャツを絞った。

 汗が止めどなく、地面を流れた。しばらくするとこの汗が、すべて真っ白な“塩”に変わる。恐ろしい事だ。汗を絞り切り、僕は再び、地面に大の字で倒れた。

「お疲れ。大丈夫?」

 地面に転がっている僕に、楓が話しかけてきた。

「み、見りゃ分かるだろ」

 僕は、かすれ声で返事をした。

「な、何でお前、そんなに元気なんだ?」
「言うたやん。慣れとるって」

 学生時代は体操選手だったと言う楓は、こういった炎天下の練習に慣れているそうだ。一方、ずっと帰宅部だった僕には、この仕打ちはかなり参っていた。
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