危険地帯



私はその声を上書きするように、博さんの言葉を思い出す。



『羽留ちゃんは、一緒にいる人達のほんの一部分しか見てないんだよ』



本当にそうだとしたら。


彼らが見せている姿が、たった一部分だけだとしたら。



彼らの温かさは、どこに隠されているの?




『もっとその人達を見て、感じて、知っていけば、本当はどんな人なのかわかるはずだよ』



恐怖を、勇気に。


私にも、できるだろうか。


目を逸らさずに彼らを見つめて、手を伸ばしたら、わかるのだろうか。



真っ黒な世界で生きる彼らのことを、喧嘩が好きな彼らのことを、本当に理解できるの……?




悪だけが存在する黒龍の、小さな監獄の中。


透明な鎖で縛られながら、俯いていた顔をそっと上げた。




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