危険地帯
「負けたセンパイ達がいけないんじゃないですか」
司の龍司という人を貶めるような口調に、龍司という人は眉をひそめた。
深月は龍司という人をじっと見て、「しょうがねぇな」と呟いた。
だけど、私は見落とさなかった。
深月が、これからの展開を全てわかっているかのように、ニンマリと笑ったところを。
「どうせ俺達と闘って勝ったら黒龍に戻ろうとか、ダサいこと考えてんだろ?」
「チッ。あぁ、そうだ。言っとくが、俺達は前よりも格段に……」
「あー、いいよそういうの。めんどくせぇから」
深月の言い方にイラついたのか、龍司という人は吐き捨てるように舌打ちをした。
深月は龍司という人の言葉を遮って、ため息をつく。
「いいぜ。ちょうど退屈してたし。――その喧嘩、受けて立つ」
相良深月の薄い黒の瞳が、燃えているように見えた。
黒龍のルールを守っているのなら、この喧嘩に負けたら黒龍から抜けなきゃいけないのに。
それなのに、喧嘩を買っちゃうんだ。