危険地帯




「負けたセンパイ達がいけないんじゃないですか」



司の龍司という人を貶めるような口調に、龍司という人は眉をひそめた。


深月は龍司という人をじっと見て、「しょうがねぇな」と呟いた。



だけど、私は見落とさなかった。


深月が、これからの展開を全てわかっているかのように、ニンマリと笑ったところを。



「どうせ俺達と闘って勝ったら黒龍に戻ろうとか、ダサいこと考えてんだろ?」


「チッ。あぁ、そうだ。言っとくが、俺達は前よりも格段に……」


「あー、いいよそういうの。めんどくせぇから」



深月の言い方にイラついたのか、龍司という人は吐き捨てるように舌打ちをした。


深月は龍司という人の言葉を遮って、ため息をつく。




「いいぜ。ちょうど退屈してたし。――その喧嘩、受けて立つ」




相良深月の薄い黒の瞳が、燃えているように見えた。



黒龍のルールを守っているのなら、この喧嘩に負けたら黒龍から抜けなきゃいけないのに。


それなのに、喧嘩を買っちゃうんだ。



< 123 / 497 >

この作品をシェア

pagetop