危険地帯
そんなこと、あるわけねぇ。
あいつは、俺達を怖がっていたんだ。
今すぐに逃げたかったんだ。
……あいつが罰を拒むことは、多分、ねぇよ。
俺は、それを“声”にできなかった。
それでも、欠片程度の期待をしてしまう俺は、バカだ。
「もしも」が、本当になったら。
その先は、想像しなかった。
鼻をかすめる、地下にまで運ばれてきた雨の匂いが、俺の脳内にある記憶がしまいこんである部屋の扉を、ドンドンと叩く。
扉は簡単に開いた。
部屋の奥から、“あの日”の記憶が扉から顔を出した。
あれは、俺と司が黒龍に入って間もない頃だった。
“あの日”も、今日みたいに雨が降っていた――。