危険地帯





特別な審査も面接もなく、『入りたい』と言えば入れた黒龍。


それくらい自由で気分のままに動く黒龍に入ったばかりの俺と司は、当時総長だった龍司センパイについて行き、黒龍はどんな族なのか自分の目で手で感覚で、知ろうとしていた。



まだ、こっちの世界の過ごし方にも、喧嘩のやり方にも、慣れていなかった。


見よう見まねで、ストレスを発散するように、知らない誰かを殴る。


幾度となく傷つけたし、傷つけられた。



不思議と、だんだんと痛みは感じなくなっていった。



当時から、黒龍の悪い噂は多かった。



『……チッ、誰だよ。噂流してる奴は』



龍司センパイは、噂を耳にする度、機嫌を悪くした。


噂が全て事実だったから、というのもあるのだろう。



もちろん、黒龍の悪い噂のようなことを、俺と司はしたことがなかった。


龍司センパイやその前の総長達が、結構派手にやっていたらしい。



本音を言えば、その時の俺は喧嘩の楽しさを実感できずにいたし、悪い噂の内容はどれもゲスだった。



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