危険地帯
俺の頭上に落ちた一適の雨粒が、鉛のように重かった。
これが暴走族なのだと、思い知らされた。
その日の帰り道、雨でびしょびしょに濡れた捨て犬を見つけた。
『クゥン……』
俺を見つめる子犬の潤んだ瞳に誘われるように、足を止めた。
コンビニで傘を買っていた俺は、その傘を子犬にさしてやった。
大丈夫さ。
いつか誰かが、お前を気に入ってくれる。
可愛がってもらえる。
俺がお前を飼うのは、無理だけど。
だから、さ。
『元気出せよ』
俺は、子犬に手を伸ばした。
しかし、その手が子犬に触れることはなく、
『深月』
龍司センパイの、喧嘩が終わった今でも苛立っている声に、ピタリと手を止めた。