危険地帯




『何してんだ。行くぞ』


『でも、捨て犬が……』


『そんなもん、』



ザーザー、と雨が激しくなる。


子犬の鳴き声が聞こえなくなるくらい、雨音が耳の奥を突き刺した。




『どうでもいいだろ』




龍司センパイは、きっと心からそう思っていた。


その言葉は、俺の心をズタズタに切り裂いた。



この世界では、これが普通なんだ。


見捨てるのが、当たり前。


同情も優しさも、要らない。



ならば、俺の中にある、この世界では不必要なものを、壊さなければいけない。


この世界で闇に包まれながら生きると、決めたのだから。



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