危険地帯




壊し方は、簡単だった。


俺が闇に馴染めばいいだけ。



『……グハッ』


『はっ、はっ、』



無我夢中に、喧嘩をした。


非情な暴力を、繰り返した。



表の世界の常識を、今までの日常を、何かに対しての感情を、ひとつひとつぶち壊す。


いつしか、感じていた吐き気はなくなり、不必要なものを壊すために振るう拳に快楽を覚えていった。



……要らねぇ。


何も、要らねぇ。


だから、だから。



『苦しさも、消えろ……!』



吐き出せば、消えると思っていた。


でも、それは間違いで。


不必要なものを壊したら、苦しさが生まれて、俺の胸を締め付けていった。



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