危険地帯
地下を出ると、昨日から続く雨が“あの日”を連想させる。
夜だというのに星が見えない空は、厚い雲に覆われていた。
ビニール傘をさした俺は、病院へと歩き出す。
色のない景色は、まるで俺の心のように暗かった。
『深月、あなたには――』
鮮明に思い出せる、もう一人の羽留の言葉。
無意識に強く握り締めていた拳を開くと、手のひらには爪のあとがくっきりとついていた。
『――“私”を解放してもらうわ』
たった一言で、たった一瞬で。
俺は、その罰の意味を理解した。
最初から、終わりが来ることは知っていた。
まあ、終わり方が、こんな風だとは思わなかったけど。
羽留が待ち望んでいた、終わり。
今日、終わってしまうんだ。