世界が終わる音を聴いた

朝食を終えて自室に戻ると、ベッドの足元に立て掛けられていたギターケースを引っ張り出す。
夢を諦めたときに、もうその夢を見たくなくてずっと仕舞い混んでいた。
忘れられたように長い間置いておかれた、弾く人をなくしたギターは、ただ静かに時が過ぎるのを待っていた。
諦めた夢ならば手放してしまえばよかったのに、そうすることもできたはずなのに、それでも手元に置いたままにしていたのは心のどこかで諦めきれていなかったから。
捨ててしまった夢ならば、いっそ趣味にして身近に弾いて歌えばよかったのに、そうしなかったのはその夢を本当は捨てきれていなかったから。
趣味にしてしまえば、本気で音楽をすることはもうなくなってしまうから。
今思えば、ずっと見ないようにしていたことだったけれど、自分の行動がすべて物語っている。

「バカだな、今さらになってこんなことに気づくなんて」

取り出したギターを、そっと撫でる。
懐かしい感触。
弦はとっくに古くなって、錆びているだろう。

ベッドに腰かけて、膝で抱えて指で弦を弾くと、やはり音はめちゃくちゃで酷いものだ。
それでもその懐しい感触に涙が出る。
予備であった弦に張り替えてチューニングをする。
鳴らしていなかったギターは、今、どんな音を響かせてくれるだろう。



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